散布技術の進化とオリゼメート 機械化の進展とともに

機械化の進展とともにオリゼメートを取り巻く環境も進化をしてまいりました。このコンテンツでは、その機械化の変遷とオリゼメート散布技術の進展、水稲作における農薬と散布機の現状と展望、そして有人ヘリコプターやラジコンヘリコプターを活用した空中散布をテーマにした内容をご紹介します。

オリゼメート粒剤散布の様子

機械化の変遷と多様化する散布方法のニーズに対応する施薬法の開発

オリゼメートは1974年、本田水面施用粒剤として初回登録を取得し、1975年に発売した。発売当時、本田粒剤散布は最も素朴な手撒き、そして手動の散粒器で行われていたが、その後、背負型動力噴霧器の普及が進み、畦畔からの散布が可能となったことで、散布効率は飛躍的に高まった。

1975年:オリゼメート粒剤(本田水面施用粒剤発売)

手撒き

手動散粒器

背負動力噴霧器

乗用大型散布機

1980年代になると、有人ヘリコプターによる空中散布の普及が全盛期を迎えた。オリゼメート粒剤の普及が進むにつれ、本剤の広域一斉防除が高い評価を受けるようになり、空中散布に対応した専用製剤と散布技術の確立を目指した開発に取組んだ結果、いもち病防除用粒剤としては日本初の空中散布登録を取得するに至った。その後、無人ヘリコプターによる農薬の空中散布技術が進展、飛散のより少ない防除技術としてニーズが高まり、オリゼメートも無人ヘリコプターへの適用拡大を進めた。ヘリコプター散布については、本稿の農水協農林航空技術センター長中島氏の寄稿で詳しい説明が為されている。

1985年:オリゼメート粒剤20(空中散布)

有人ヘリコプター

1992年:オリゼメート粒剤20(適用拡大:無人ヘリコプター)

無人ヘリコプター

また、1990年代に入って、田植同時で田面に肥料を散布する移殖同時施肥技術が機械メーカーにより進められていた。移植同時施肥技術については、(独)農業・食品産業技術総合研究機構基礎技術研究部長宮原氏の寄稿で詳しく紹介されている。事前試験においてオリゼメートの施薬方法の中でも、イネ根圏への側条施用が特に高い有効性を示すことが分かっていた。そこで、側条施肥同時処理が出来るオリゼメート製剤の開発に着手、1999年にペースト肥料に混合し、移植同時で使用するオリゼメート製剤を発売した。

1996年:オリゼメート粒剤(適用拡大:移植時側条施用)

※当時対応可能な田植機の開発が困難だったことから、普及を断念

1999年:側条オリゼメート顆粒水和剤

そして1998年、オリゼメートシリーズにいもち病防除体系に革新を起こす新製剤が加わった。「育苗箱処理製剤」の登場である。育苗箱処理剤発売後、本田防除体系から箱処理防除体系への急激なシフトが起こり、育苗箱処理は現在では最も主流ないもち病防除法となっている。

Dr.オリゼ箱粒剤は有効成分の溶出を制御することで、非常に長い期間に渡りいもち病を予防する事が可能である。これにより、田植え前に育苗箱に長期持続型の箱処理剤を散布することで、本田防除と同等の効果が得られるようになった。Dr.オリゼ箱粒剤は高齢化等により一層高まっていた省力化ニーズに合致した画期的商品であると言える。

本剤は手散布される場合が多いが、大区画圃場では育苗箱処理でも時間・労力の負担が大きく、より省力的に箱処理剤を散布する為に、農機具メーカーと連携し、散布器具を共同開発、これらは各農機具メーカーから販売されている。さらには、田植機のオプションとしてクボタ「箱まきちゃん」、ヤンマー「すこやかマッキー」、井関「らくまきちゃん」が発売されている。これらは、田植機に簡単に取り付け可能で、薬剤タンクに箱処理剤を投入し、田植えと同時に自動で薬剤を散布出来る装置である。加えて過剰、不均一散布、薬剤のこぼれ等が起きないという利点もある。現在、大型生産者を中心に本機器の普及が進んでいる。

1997年:Dr.オリゼ箱粒剤

散粒器

ミヤコ化学(株)

パットホース

(有)中尾製作所

田植同時処理

箱まきちゃん(株)クボタ

田植同時処理

らくまきちゃん 井関農機(株)

2000年代後半になるといもち病防除に更なる省力化が求められ、そのニーズに応えるべく、いち早く新製剤の開発検討を開始、そして遂に場面最適剤として「播種同時処理剤」の開発に成功した。溶出制御をオリゼメートに加えることにより、移植されるまでの溶出最小化に成功、本圃に移植後、本格的に有効成分が放出されるという特殊技術が本剤には用いられている。この特殊技術により、効果持続期間や薬効をDr.オリゼと同等に保つことに成功した。これと併行して、機械メーカーでは播種ラインに取り付け或いは、途中に設置する薬剤散布装置の開発が進められており、各社から播種同時処理機器が発売されている。

本剤の登場で、初中期のいもち病防除作業が完全に自動化され、著しい防除作業の省力化が可能となった。現在最も成長著しい分野である。

2010年:ファーストオリゼ箱粒剤(播種同時施薬器)

播種同時施薬器

パラットDX(型番:KS-25S)(株)美善

播種同時施薬器

苗箱施薬ホッパー
(型番:SDP-103L・SDP-33L)スズテック(株)

播種同時施薬器

薬丸ヒット(KS-302・KSP-100)
(株)ホクエツ

播種同時施薬器

みのる式播種同時施薬装置(MPA-12)
みのる産業(株)

今後、高齢化や経営規模の大型化により、更なる効率性向上と省力化が必要と考えられる。現在は育苗作業自体を省略すべく、本圃に直接播種する「直播技術」が注目を集めている。しかしながら、本技術は病害防除を如何にして行うかが大きな課題として残されている。現状の選択肢は本田防除に限られており、直播栽培では病害防除が大きな労力負担、コスト増に繋がっている。即ち、移植栽培の箱処理に相当する省力防除法が求められている。直播と同時に処理できる薬剤の開発は、いもち病防除のマーケットリーダーであるオリゼメートシリーズにとっては至上命題であり、現在、一刻も早い発売をめざし、わが国の水稲栽培に貢献出来るよう、開発を進めている。

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